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北海・バルト海の商業世界

[編]斯波照雄・玉木俊明

[定価]本体4,500円+税

[体裁]四六判・480ページ

[ISBN]978-4-86582-003-4

2015年5月発売

北海・バルト海から資本主義は生まれた!

中世盛期から近世にかけて、広大なヒンターランドと豊かな森林資源を有するがゆえに、北海・バルト海に囲まれた北方ヨーロッパは、一見、華やかに見える地中海世界以上に繁栄を誇った。ハンザ都市を中心とした交易ネットワークをフルに活用し、やがては資本主義を生みだすことになる地域の歴史を、海洋・陸上双方の側面から多角的に論じた、わが国初めての試み。

 

・・・地中海ではなく、北海・バルト海から資本主義は生まれた。旧来の生産史観、さらにプロト工業化から工業化へという単線的な流れを重視する研究者なら別だが、地域的にみて、この二つの海は、まぎれもなく、資本主義揺籃の地域である。読者は、これまでとは違ったイメージでの資本主義への道を、ここに見いだせるかもしれない。それは、北海とバルト海という二つの海が生み出した資本主義である。(本書・序文より)

序文 発展する北海・バルト海の商業空間(玉木俊明) 


第1章 中世のバルト海・ロシア交易

――ハンザとノヴゴロドの商館交易(小野寺利行) 

第2章 中世後期・近世のドイツ商業と北海・バルト海(谷澤 毅) 
第3章 ハンザ都市の商業構造

――北海・バルト海における塩とビール(斯波照雄) 

第4章 交渉するヴァイキング商人

――10世紀におけるビザンツ帝国とルーシの交易協定の検討から(小澤 実)

第5章 中世アイスランドの商業――羊毛布と女性(松本 涼) 

第6章 中世ノルウェーの商業と経済

――北方のタラ、ハンザ商館、そして黒死病(成川岳大) 

第7章 フランドルとハンザ、そしてフランスとハンザ

――ブルッへの浮沈をめぐる一つの物語(山田雅彦) 

第8章 中世ハンザ商人の世界――リューベックを中心に(柏倉知秀) 
第9章 近世スウェーデンの都市計画と商業政策

――グスタヴ・アドルフとストックホルムの首都化構想(根本 聡) 

第10章 知られざる海洋帝国の姿

――近世デンマークの海峡支配と国際商業(井上光子) 

第11章 中世後期から近世における

陸上交易の発展と北海・バルト海の世界(菊池雄太) 

第12章 近世のイギリスと北海・バルト海・大西洋の商業関係(玉木俊明)  

第13章 近世オランダのバルト海貿易――母なる貿易(玉木俊明)


【執筆者紹介】(五十音順)

井上光子(いのうえ・みつこ)

関西学院大学文学部非常勤講師
主著:橋本淳編『デンマークの歴史』(共著)創元社、1999年、「デンマーク社会の歴史的基層」(仲村優一・一番ヶ瀬康子編『世界の社会福祉6 デンマーク・ノルウェー 』 旬報社、1999年)、 「デンマーク王国の海上貿易――遅れてきた重商主義国家」(深沢克己『国際商業』近代ヨーロッパの探求9、ミネルヴァ書房、2002年

小澤 実(おざわ・みのる)

立教大学文学部准教授
主著:小澤実・薩摩秀登・林邦夫『辺境のダイナミズム』岩波書店、2009年、金沢百枝・小澤実『イタリア古寺巡礼』(3冊)新潮社、2010~12年、「モンゴル帝国期以降のユーラシア世界とヨーロッパとの交渉」(『東洋史研究』71(3)、2013年)、ヒロ・ヒライ、小澤実編『知のミクロコスモス』中央公論新社、2014年

小野寺利行(おのでら・としゆき

明治大学ほか非常勤講師
主著: 「13世紀ノヴゴロドの対ハンザ通商政策――西ドヴィナ川流域地方との比較において」(『ロシア史研究』64、1999年)、「中世ノヴゴロドのハンザ商館における取引規制」(『市場史研究』27、2007年)、「中世ノヴゴロドのハンザ商館における生活規範」(『比較都市史研究』30(2)、2011年)

柏倉知秀(かしわくら・ともひで)

徳山工業高等専門学校一般科目准教授
主著:「中世北ヨーロッパ商業圏におけるベー塩取引と海運――運送契約書の分析」(『北欧史研究』19、2002年)、「中世ハンザ都市の商業規模――14世紀後半のポンド税決算書を中心に」(『比較都市史研究』23巻(1)、2004年)、「14世紀後半リューベック商人のネットワーク」(『立正史学』105、2009年)

菊池雄太(きくち・ゆうた)

香川大学経済学部准教授
主著:「近世ハンブルクのバルト海海上貿易――中継貿易都市の流通構造に関する一考察」(『社会経済史学』79(2),2013年)、「ハンブルクの陸上貿易1630~1806年――内陸とバルト海地方への商品流通」(『社会経済史学』78(2)、2012年)

斯波照雄(しば・てるお)

中央大学商学部教授
主著:『中世ハンザ都市の研究――ドイツ中世都市の社会経済構造と商業』勁草書房、1997年 、『ハンザ都市とは何か――中近世北ドイツ都市に関する一考察』中央大学出版部、2010年、『西洋の都市と日本の都市 どこが違うのか――比較都市史入門』学文社、2015年、編著『商業と市場・都市の歴史的変遷と現状』(中央大学企業研究所研究叢書)中央大学出版部、2010年

谷澤 毅(たにざわ・たけし)

長崎県立大学経済学部教授
主著:『北欧商業史の研究――世界経済の形成とハンザ商業』知泉書館、2011年、『佐世保とキール 海軍の記憶――日独軍港都市小史』塙書房、2013年、『地域と越境――「共生」の社会経済史』(共編著)春風社、2014年

玉木俊明(たまき・としあき)

京都産業大学経済学部教授
主著 :『北方ヨーロッパの経済と商業——1550-1815年』知泉書館、2008年、『近代ヨーロッパの誕生——オランダからイギリスへ』(講談社選書メチエ)、2009年、『近代ヨーロッパの形成――商人と国家の世界システム』創元社、2012年、『海洋帝国興隆史――ヨーロッパ・海・近代世界システム』(講談社選書メチエ)、2014年

成川岳大(なりかわ・たかひろ)

埼玉大学ほか非常勤講師
主著:「ヴァイキングの活動――「北の道」からノルウェーへ」(大島美穂・岡本健志編『ノルウェーを知るための60章』明石書店、2014年)、「12世紀スカンディナヴィア世界における「宣教大司教座」としてのルンド」(『史学雑誌』120(12)、2011年)、「12世紀オークニー司教の「独立性」と外部諸権力:「文化の十字路」から「ノルウェー教会の義理の娘」へ?」(『西洋史研究』新輯39 、2010年)

根本 聡(ねもと・あきら)

旭川工業高等専門学校准教授
主著:「スウェーデン鉄とストックホルム――鉱山業における国家と農民」(『ヨーロッパ文化史研究』6、2005年)、「海峡都市ストックホルムの成立と展開――メーラレン湖とバルト海のあいだで」(村井章介編『港町と海域世界』シリーズ港町の世界史1、青木書店、2005年)、「近世スウェーデン王国のステープル都市体系とストックホルムの首都化過程」(『市場史研究』27、2007年)、「ストックホルム」「鉄山の歴史」(村井誠人編『スウェーデンを知るための60章』明石書店、2009年)

松本 涼(まつもと・さやか)

福井県立大学学術教養センター講師
主著:「中世アイスランドと北大西洋の流通」(山田雅彦編『伝統ヨーロッパとその周辺の市場の歴史』市場と流通の社会史I、清文堂出版、2010年)、「13世紀アイスランドにおける平和維持――ノルウェー王権受容に関する一考察」(『史林』91(4)、2008年)

山田雅彦(やまだ・まさひこ)

京都女子大学文学部教授
主著:『中世フランドル都市の生成――在地社会と商品流通』ミネルヴァ書房、2001年、「中世中期サン・トメールの市場をめぐる自由と規制――13世紀ワイン・ステープル市場再論」(『史窓』65、京都女子大学史学会、2008年)、編著『伝統ヨーロッパとその周辺の市場の歴史』清文堂出版、2010年