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古代ユダヤ戦争史―聖地における戦争の地政学的研究

 [著]モルデハイ・ギホン&ハイム・ヘルツォーグ

[訳]池田 裕

[体裁]四六判・464ページ

[定価]本体4,800円+税

[ISBN]978-4-903487-89-2

2014年6月発売

 ✣日本図書館協会選定図書

 

 

ユダヤの民は、いかにして〈約束の地〉に定住し、統治し、守り抜こうとしたのか?

旧約聖書には、古代ユダヤ民族が、エジプト、アッシリア、シリア、ローマ帝国など強国の脅威に常にさらされながら、〈約束の地〉に定住し、統治し、守り抜こうとした数多くの戦いの物語に満ちている。

 

軍人としてのキャリアも豊富な2人の考古学者が、科学的思考と〈丘の向こう側を読む〉想像力を駆使し、さらに百数十点におよぶ地図や写真を援用して、旧約聖書に描かれた戦争の物語を臨場感ゆたかに再現!

数千年の時を超えてなお適用可能な戦争の法則と教訓をくみ取る。

 

聖地パレスティナ(カナン)は、ユーラシア大陸とアフリカ大陸を結ぶ唯一の〈陸橋〉。この地理的特質ゆえに、この地は平時においても戦時においても、絶対不可欠な戦略的地域であった。

 

族長アブラハムのカナン移住、モーセに率いられてのエジプト脱出とシナイ半島砂漠の彷徨、ヨシュアによるエリコ攻撃、イスラエル統一王国樹立と維持のためのダビデやソロモンの戦い、ネブカドネツァル王によるバビロニア捕囚、セレウコス朝シリアに対するユダ・マカベアの反乱…

 

ユダヤの民は、その長い歴史の中で何度も、指導者の無能や状況判断ミスのために戦いに敗れ、捕囚の辛酸をなめ、民族流浪の苦痛を味わってきた。しかし、古代のユダヤ人は、事実上1200年もの間、聖地を統治できた。それは、聖地の地形や地勢を十分に理解し、徹底的に活用したからである。

 

「本書は、古代イスラエル軍事史の形をとりながら、民族や国家がその存在を揺るがす危機を乗り切るために何を必要とするのか、国民や軍隊が信頼できる真の優れた指導者あるいは指導力(リーダーシップ)とは何かを考え、語ろうとした書である。」ーー訳者

▶『みるとす』2014年12月号でご紹介いただきました。

【第I部】

第1章 場面の設定

第2章 ヨシュアの軍事遠征

第3章 士師時代の戦争

第5章 統一王国

第6章 初期イスラエル時代

第7章 オムリとアハブの治世におけるイスラエル

第8章 アハブ以後のイスラエル

第9章 レハブアム時代におけるユダの防衛システム

第10章 ウジヤ治世下のユダ

第11章 ユダ最後の世紀

【第II部】

第12章 初期マカベア戦争

第13章 解放から独立へ

詳細…

【著者】

モルデハイ・ギホン(Mordechai Gichon)

1922年ベルリン生まれ。34年に家族とともにパレスティナに移住。42年にイギリス陸軍に入隊。第2次大戦終結後、テル・アヴィヴ大学で考古学を学び、長年、同大学で軍事史と古典考古学を講じた。テル・アヴィヴ大学名誉教授。著書に『エン・ボケク―死海のオアシスにおける発掘』『パレスティナ歴史地図』『歴史における境界地域としてのシナイ』などがある。

 

ハイム・ヘルツォーグ(Chaim Herzog)

1917年ダブリン生まれ。ダブリンのウェスリー・カレッジで学び、第2次大戦中はイギリス陸軍に入隊。イスラエル建国後は同国参謀本部諜報局長に就任(1948~50、1959~62年)。75~78年、イスラエル国連大使。83年には第6代イスラエル大統領に選出され、5年の任期を2期務める。97年4月17日死去。著書に『イスラエルの英雄たち』『アラブ・イスラエル戦争』(邦題『図解中東戦争』原書房)、『贖罪の戦争』などがある。

 

【訳者】

池田 裕(いけだ・ゆたか)

1940年生まれ。筑波大学名誉教授、中近東文化センター附属博物館長、附属三笠宮記念図書館長。Ph.D.(エルサレム・ヘブライ大学大学院)。著書に、『旧約聖書の世界』(岩波書店)、『エルサレム』『聖書名言辞典』(講談社)、『古代オリエントからの手紙』(リトン)、『聖書と自然と日本の心』『死海文書Q&A』(ミルトス)など。訳書に『サムエル記〈旧約聖書Ⅴ〉』『列王記〈旧約聖書Ⅵ〉』(岩波書店)、フルッサー『ユダヤ人イエス』(教文館)、アハロニ他『マクミラン聖書歴史地図』(原書房)、ゴールズワーシー『古代ローマ軍団大百科』、デイヴィス他『死海文書大百科』、ケリガン『世界の碑文』、レンフルー他『考古学―理論・方法・実践』(東洋書林)など多数。