コラム「アメリカ史の窓」

第11回 植民地時代にタイムスリップしよう(1)

 本を読むだけでも歴史は学べる。でも実際に体験することも大事である。ではどうすれば歴史を体験できるのか。歴史の舞台を訪れてみる。それが一番である。さらに昔の人びとがどのように生きていたか実際に見られれば最高である。その夢が実現できる場所がある。ヴァージニア州にあるウィリアムズバーグという街である。
 ウィリアムズバーグは既に本作で登場している。ワシントンが機会あるごとに訪れていたヴァージニア植民地の首府である。現在、コロニアル・ウィリアムズバーグという植民地時代の生活を再現する歴史地区になっている。ワシントンD.C.から鉄道で3時間半かかるが歴史が好きな人であれば十分に行ってみる価値はある。
  分かりやすく言えば、街全体が歴史テーマパークになっている。ただ日本でよく見かけるようなテーマパークとは少し違う。一般的に日本のテーマパークの敷地には囲いがある。その囲いの中に入る時に入園料を払う。コロニアル・ウィリアムズバーグは違う。囲いはなく誰でも入れる。ただ各施設内に入る時にパスを見せる必要がある。
街の中を自由に散策しながら気になる施設があればぶらりと入ってみる。例えばこれは何屋だろうか。よく見ると、仕立て屋と書いてある。
 さて仕立て屋の中ではどのように仕事をしているのか。少し覗いてみよう。
  各施設にはキャストが配属されている。もちろんキャストは当時の服装を着用している。もちろんそれはコロニアル・ウィリアムズバーグで作られたものだ。キャストはさまざまな説明をしてくれる。
 例えば植民地時代のアメリカでは、既製服はあまり売っていなかった。もちろん最新流行のドレスをロンドンから取り寄せることはあったが、普通は布地を買って家庭で縫うか、もしくは仕立ててもらうことが多かった。布地が高価だった時代、服はおいそれと買えるものではなかったのでそれで十分に間に合った。きっと昔の人びとは、こういう店で布地を品定めしていたのだろう。服装にうるさいワシントンも常連客だったはずだ。