アリスの奇跡―ホロコーストを生きたピアニスト

▶2015年7月23日発売


[著]キャロライン・ステシンジャー

[訳]谷口由美子

 (序:ヴァーツラフ・ハヴェル)

[定価]本体2,200円+税

[体裁]四六判・304ページ

[ISBN]978-4-86582-006-5

✣日本図書館協会選定図書

 

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途方もない悪と憎悪に蹂躙されながらも、音楽を心の糧に、そして唯一の武器として、誇らかに生きつづけたひとりの女性の、驚嘆すべき人生の物語。

 

 本書は、世界最高齢(当時)のホロコーストからの生還者で、110歳まで生きたアリス・ヘルツ=ゾマーの生きざまを綴ったもの。収容所での体験や、芸術家・文化人、友人・教え子との交流などのエピソードとともに、音楽への愛と、前向きな人生哲学が語られる。果敢に人生に立ち向かったアリスの〈美と真実〉を、自身もピアニストでテレビ番組等のプロデュースも手がける著者が2004年から2011年まで取材を重ね、それが結実した本書(原題“A Century of WisdomLessons from the Life of Alice Herz-Sommer, the World's Oldest Living Holocaust Survivor”)は、世界26ヵ国で翻訳。またこの取材を元にしたドキュメンタリー映画“The Lady in Number 6 : Music Saved My Life”(「6号室の女性~音楽が私を救った」)は、2014年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞に輝いた。


 アリスは1903年、チェコ・プラハの裕福なユダヤ人家庭に生を享けた。音楽の才能に恵まれ、第二次世界大戦が勃発するまでは、コンサート・ピアニストとして将来を嘱望されていた。ナチス・ドイツによるチェコ侵攻により、まず母が、そして自身も夫と幼い息子とともにテレジエンシュタットの強制収容所に送られるが、持ち前の楽天主義と、何よりも音楽に支えられて、過酷な収容所生活を生きのびる(母と夫はついに生還できなかった)。
 終戦後はエルサレムでピアノの教師として身を立てながら、音楽を糧として生きつづけた。晩年ロンドンに移り住むと、時代の証言者として、また人生の智恵に満ちたことばや生き方そのものも注目された。2014年2月23日、アカデミー賞受賞の報を待たずに旅立ったが、その死の2日前まで、いつものように自宅でピアノを弾いていたという。


 「不平不満をこぼすのはおやめなさい。それで何が変わるものですか。かえって、ほかの人をいやな気分にさせるだけです」--未曾有の悪と憎悪に愛するひとを奪われ、人生を踏みにじられたにもかかわらず、〈憎悪は憎悪を生むだけ〉〈怒りや憎しみではなく、赦しを〉をモットーに、ほほえみとユーモアを絶やすことなく生きた、アリスの感動的な旅路を描きだす。

 

日本の読者のみなさんへ(キャロライン・ステシンジャー) 
序(ヴァーツラフ・ハヴェル:劇作家・チェコ共和国初代大統領) 

 

前奏曲  
第1楽章 アリスとフランツ・カフカ 
  ♪間奏曲:エメラルドの指輪 
第2楽章 寛容なる心  
第3楽章 ジャガイモの皮をむきながら  
  ♪間奏曲:トロイメライ  
第4楽章 ピアノのレッスン  
  ♪間奏曲:火事  
第5楽章 新たな始まり  
第6楽章 ブリキのスプーン  
第7楽章 もう歳だなんて言わない  
  ♪間奏曲 チキン・スープ  
第8楽章 音楽はわたしたちの食べ物  
第9楽章 ヒトラーがユダヤ人に与えた町  
第10楽章 スナップ写真  
  ♪間奏曲:歳をとること  
第11楽章 ガラスの檻の男  
第12楽章 きつい言葉は一切なし  
第13楽章 初めての飛行  
第14楽章 ピアノ教師アリス  
  ♪間奏曲:六号室の女性  
第15楽章 友達の輪  
コーダ:アリスの現在  

アリスの言葉  
結びにかえて―“赦す”ということ (※日本語版への寄稿)

  
 謝辞  
 訳者あとがき  
 アリス関連年譜
 注
 参考文献

Caroline Stoessinger(キャロライン・ステシンジャー)
ピアニスト。ニューヨークのカーネギー・ホール、リンカーン・センター、メトロポリタン美術館、東京のコンサートホールや、ホワイトハウス、チェコのプラハ城などで演奏。また、国際的なテレビ番組や公共イベントのために脚本・制作を手がけ、ワシントンD.C.のアメリカ・ホロコースト博物館にシンドラーのヴァイオリンが捧げられた際の番組や、ニューヨークで初上演された「ブルンディバール」の公演などに携わった。ジョン・ジェイ・カレッジの芸術研究員および教授、ニューベリー・オペラハウスでニューベリー室内楽団の芸術監督、モーツァルト・アカデミーの理事長を務めている。

 

谷口由美子(たにぐち・ゆみこ)

翻訳家。上智大学外国語学部英語学科卒業。アメリカに留学後、英米文学・児童文学の翻訳を手がける。著書に『大草原のローラに会いに―小さな家をめぐる旅』(求龍堂)、訳書に『長い冬』など「ローラ」物語シリーズ5冊、『あしながおじさん』(以上、岩波書店)、『ロ―ズの小さな図書館』(徳間書店)、『秘密の花園』(講談社)、『青い城』『銀の森のパット』『パットの夢』(以上、角川書店)、『わたしのサウンド・オブ・ミュージック』『大草原のバラ―ローラの娘ローズ・ワイルダー・レイン物語』『ルイザ―若草物語を生きたひと』(以上、東洋書林)、『わかれ道』(悠書館)など多数。