刊行案内人文(歴史・民俗・宗教・思想)>『ウェヌス―豊穣からエロスへ』

ウェヌス―豊穣からエロスへ

[著]高橋朋子

[体裁]四六判・カラー口絵4ページ+本文188ページ
[定価]本体2,000円+税

[ISBN]978-4-86582-025-6

2016年10月25日発売


 ルネサンス期イタリアを中心に、<裸体で眠る女性像(ヌード)>を見つめる視線の変遷と絵画制作とのスリリングな関係を詳細にたどる。

美と豊饒をつかさどる女神であったウェヌスは、いかにしてエロスの源泉へと変貌していったのか?
 ウェヌス(ヴィーナス)は、古代ギリシャやローマにおいては<愛(豊穣)>と<美>をつかさどる神、15世紀後半には子孫繁栄の切実な思いを担った女神として再登場。ジョルジョーネが16世紀の初頭に考案した「裸体で眠るウェヌス」という主題は、当初は婚姻画として鑑賞されていた。その一方で、裸体で眠る、あるいはベッドに横たわる裸婦は、男性鑑賞者の眼を大いに楽しませる人気の題材となった。とりわけティツィアーノの手になる柔らかな肉と熱い血の通った女性裸体画の数々は、西洋絵画史上、燦然と輝く地位を占めるにいたり、19世紀スペインのゴヤにまで影響を与えた。
 フィレンツェ(ミケランジェロ)とヴェネツィア(ティツィアーノ)の対立・確執といった興味深いテーマにも新たな視点から考察を加えつつ、<裸体で眠る女性像(ヌード)>をみつめる視線の変遷と絵画制作のスリリングな関係を詳細にたどる。

▶2017年1月1日付『図書新聞』に書評が掲載されました(評者・伊藤亜紀氏)。詳細…

序章
第一章 女神ウェヌス
      1、ウェヌスの誕生
      2、古代のウェヌス像
      3、中世のウェヌス
第二章「双子のウェヌス」
      1、ウェヌスの再生
      2、ボッティチェリ作《春》と《ウェヌスの誕生》
      3、ティツィアーノ作《聖愛と俗愛》
第三章 ヴェネツィアの「裸体で横たわるウェヌス」
      1、ジョルジョーネ作《眠るウェヌス》
      2、ジョルジョーネの《眠るウェヌス》の後継
      3、ティツィアーノ作《ウルビーノのウェヌス》
      4、ティツィアーノ作《ウェヌスとクピドと鶉》
      5、ティツィアーノ作《ウェヌスとオルガン奏者》
      6、ティツィアーノ作《ウェヌスとリュート奏者》
第四章 ティツィアーノとミケランジェロ
      1、若きティツィアーノとミケランジェロ
      2、ティツィアーノとフェッラーラのアルフォンソ公
      3、ミケランジェロとフェッラーラのアルフォンソ公 

          4、ミケランジェロ作《ウェヌスとクピド》
          5、ティツィアーノとミケランジェロの直接対決 
          6、ティツィアーノが描いた多様な女性裸体ポーズ
第五章 スペインの「横たわるウェヌス」
      1、ベラスケスの《鏡を見るウェヌス》
      2、ゴヤ作 《裸のマハ》《着衣のマハ》
あとがき

高橋朋子(たかはし・ともこ)
1952年京都生まれ。1999年早稲田大学大学院博士後期課程満期退学。現在、学習院大学講師、学習院女子大学講師。専門は16世紀初頭のヴェネツィア派の絵画。
主要論文:「ジョルジョーネと古代美術」『ヨーロッパ文化の再生と革新』所収、知泉書館、2016年。「現に生きる女を描くということ」『美学』1998年(193号)。「≪テンペスタ≫の主題解釈」『日伊文化研究』2000年(38号)。「ヴァザーリとジョルジョーネのマニエラ・モデルナ」『地中海学研究』2008(31号)他。訳書:ピーター・ハンフリー『ルネサンス・ヴェネツィア絵画』白水社、2010年。