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遺伝子から解き明かす 昆虫の不思議な世界—地球上で最も繁栄する生き物の起源から進化の5億年

▶2015年11月25日発売

[編]大場裕一・大澤省三・昆虫DNA研究会

[定価]本体4,500円+税

[体裁]四六判・652ページ(カラー100ページ以上)

[ISBN]978-4-86582-007-2

 ※品切れ、返品待ち

 

「地球とは昆虫の惑星である」といわれるほどに、砂漠から高山さらに熱帯雨林にいたるまで、地球上のあらゆる環境に適応していった昆虫。その進化を支えるDNA配列の変異やタンパク質の進化など、昆虫の分子レベルの仕組みを見ることを通して、複雑かつ精妙で繊細、不思議と魅惑にみちた昆虫の世界を紹介。


【本書の特徴]
◉昆虫の起源と進化のストーリーについて、DNAレベルの仕組みをもとに紹介した、初めての一般向けの本!
◉カゲロウやトンボ、ハチにチョウ、さらにカブトムシやクワガタムシまで、広範な昆虫の世界を一冊に収録した昆虫関連書の決定版!
◉多くのカラー写真・イラスト(カラー100ページ以上)と平易な解説で、入門者でもわかりやすく読める。
◉分子生物学の基礎知識を10以上のコラムを用いて解説。
◉各分野の第一人者が、昆虫DNA研究のエッセンスをそれぞれの視点から解説。


池田清彦氏(生物学者・評論家。TV番組「ホンマでっか!?TV」に出演中)
DNA配列の解析が比較的容易になって、他の生物と同様に昆虫の系統関係もかなり正確に把握できるようになってきた。それでわかったことは、系統と形態は必ずしもパラレルにならないことだ。本書はその謎解きに挑んだすばらしくスリリングな研究成果の現時点での集大成だ。こんなに面白い本は稀である。昆虫のめくるめくばかりの多様性を生み出した進化の複雑さに思いを馳せれば、知的貴族の気分が味わえる。

柏原精一氏(サイエンスライター・『科学朝日』元編集長)
小さい、飛べる、種数が多い、形態が多様、擬態が顕著、紫外線を感じる、高度なセンサーを備えている……人類とはまるで対極の「哲学」をもって繁栄している生き物だからこそ昆虫はおもしろい。短命で世代交代が速く、しかも多くの卵を産むのだから、進化の速度は高等動物の何十倍、何百倍。彼らのDNAに書き込まれた情報を探る作業から、私たちの側が学ぶべきことが無数に見出されることになるに違いない。


▶『生物科学』67巻4号に書評が掲載されました(評者・河野和男氏)。

第Ⅰ部 分子系統樹が解き明かす昆虫の進化ドラマ

1章   昆虫の起源と初期の進化

昆虫類のバイオヒストリーを記録するDNAの世界

2章   分子系統樹にみる甲虫の進化様式

静の進化と動の進化の世界

3章 日本の地史と昆虫相の成立

地理形成に由来する進化の世界

4章 日本における昆虫類の分布と棲みわけ

時季や地理に由来する種分化の世界

第Ⅱ部 めくるめく昆虫の多様な生きざま

5章 
イチジクコバチにみる昆虫と植物の共進化

〈1種対1種〉関係の進化の世界

6章 チョウにみる進化と多様化

DNAによって解明される分化・擬態・共生の世界

7章 
昆虫の奇妙で多様な生活史

複雑な様相をみせる昆虫の生態の世界

8章 多様性に満ちた甲虫の進化

変容する形態・機能の世界

 第Ⅲ部 分子レベルで明かされる昆虫進化の不思議

9章   クワガタムシの大顎・カブトムシの角の発生メカニズム

使いまわされる遺伝子と形態進化の世界

10章 チョウの斑紋形成とその進化

昆虫界に彩りを与える遺伝子の世界

11章 ホタルが光を放つとき

タンパク質の進化がもたらす多様性の世界

12章 チョウの〈味覚〉と産卵行動

本能行動を支える遺伝子の世界

 【コラム】

①分子系統樹のつくり方と読み方 ②ミヤジマトンボ ③ハプロタイプ・ネットワーク ④ベーリング海峡を横断した昆虫―青色シジミの分布拡大 ⑤ウラジミール・ナボコフ ⑥DNAバーコーディング ⑦ヒトジラミ―アタマジラミ VS コロモジラミ ⑧砂漠のゴミムシダマシ ⑨ハプロタイプ・ネットワーク ⑩渡りをするチョウ―アサギマダラとオオカバマダラ ⑪昆虫の進化と共生微生物 ⑫性を操作する細菌「ボルバキア」

 

(執筆順)
蘇 智慧(そ・ちけい)
JT生命誌研究館主任研究員、大阪大学大学院理学研究科招聘教授。昆虫をはじめとする節足動物の進化と多様化のプロセスとメカニズム、生物間の共生関係などに興味がある。著書に『DNAでたどるオサムシの系統と進化』(哲学書房・2002年)など。

大澤 省三(おおさわ・しょうぞう)(編者)
ロックフェラー医学研究所助手、名古屋大学理学部学科生物学科教授、JT生命誌研究館顧問などを勤める。専攻は分子生物学・分子進化学・昆虫学。著書に『細胞核―特に細胞化学の立場から』(岩波書店・1959年)、『Evolution of Genetic Code』(Oxford UP・1995年)など多数。

伊藤 建夫(いとう・たてお)
信州大学理学部生物科学科元教授。昆虫DNA研究会前代表幹事。信州大学名誉教授。現職中は大腸菌とプラスミドのDNA複製の研究を行ない、現在はチョウの系統地理に興味をもち研究している。著書に『岩波生物学辞典』(岩波書店・2012年、分担執筆)など。

東城 幸治(とうじょう・こうじ)
信州大学学術研究院理学系准教授。昆虫類を中心に、クマムシからクマまでの多様な動物の系統地理の研究に取り組む。著書に『カカトアルキのなぞ』(新日本出版社・2007年)、『ライフサイエンスのための生物学』(培風館・2015年、共著)など。

矢後 勝也(やご・まさや)
東京大学総合研究博物館助教。鱗翅目、特にチョウ類を中心とする系統分類学や生物系統地理学、進化生物学、生態学などの自然史学的研究を軸としながら、保全生物学的研究にも取り組む。著書に『新訂原色昆虫大圖鑑、蝶・蛾篇』(北隆館・2007年、共著)など多数。

後藤 寛貴(ごとう・ひろき)
名古屋大学大学院生命農学研究科特任助教。もともとクワガタ飼育が趣味。卒研生の頃クワガタに関する発生学的研究が皆無であることに気づく。これを機に修士課程以降はクワガタの大顎形成機構の解明を研究テーマに据え、以来継続して同テーマを中心に研究を続けている。

新美 輝幸(にいみ・てるゆき)
基礎生物学研究所進化発生研究部門および総合研究大学院大学教授。昆虫の翅やカブトムシの角など昆虫が進化の過程で独自に獲得した新奇形質に着目して、昆虫の多様な形質をもたらす分子基盤および進化メカニズムを解明することを目指している。

渡辺 一雄(わたなべ・かずお)
広島都市学園大学特任教授、広島大学名誉教授。主な研究領域は細胞培養法による胚細胞の増殖・分化制御とギフチョウの種生物学。著書に『発生と分化』(共立出版・1977年)、『生命とはなにか』(岩波書店・1994年)、『からだの働きと健康』(岩波書店・1985年)、『生物学と人間』(裳華房・2000年)など。

大場 裕一(おおば・ゆういち)(編者)
名古屋大学大学院生命農学研究科助教。昆虫DNA研究会代表幹事。未知の発光生物探しから、発光生物に関する文化資料の収集まで、発光生物に関するあらゆることに興味がある。著書に『光る生きものはなぜ光る?』(文一総合出版・2015年)など。

坂本 佳子(さかもと・よしこ)
国立研究開発法人国立環境研究所研究員。学生時代に「チョウの保全研究」に明け暮れ、現在は「外来アリの薬剤防除」と「ミツバチ寄生ダニ」の研究に目下没頭中。

尾崎 克久(おざき・かつひさ)
JT生命誌研究館研究員。生物同士がどのように関わり合いながら生きているのかを理解したいと思い、アゲハチョウが植物を見分ける仕組みの解明に取り組んでいる。生態学の知見と分子の情報を結び付けることが目標。