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【ビジュアル版】氷河時代―地球冷却のシステムと、ヒトと動物の物語

 

【編著】ブライアン・フェイガン

【訳】藤原多伽夫

 

定価 本体5,800円+税

B5判カラー240ページ

2011年9月発売

ISBN978-4-903487-48-9

✣日本図書館協会選定図書

 

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非常な寒冷期と急速な温暖期はなぜ起こり、人類や動物はいかに生きのびたのか―

 

過去1億年にわたって、地球は寒冷化の道をたどってきた。 厳しい気候条件が続いた250万年の間に、ヒトは飛躍的な進化をとげた。発達した知能と、それを実現する手の能力を駆使して、ヒトは環境の変化に適応して生きのび、繁栄した。

 

地球規模の温暖化と海水面の上昇が人類の生活の基礎を脅かしている今日、過去の気候と、ヒトと動物たちが適応してきた方法をたどり、わたしたちは何を学び取ることができるのか。非常な寒冷期と急速な温暖期はどうして引き起こされたのか。そして、人類は、このように不安定で敵対的な世界の中で、いかにして生きのびてきたのか。

 

本書は、4人の傑出した専門家が、それぞれ独自の側面から、最新の発見にもとづいて氷河時代の物語をつむぐ。気象学や地質学、人類学や古生物学の最新の知見を紹介しながら、数千万年にわたる気候変動のしくみと、ヒトや動物の環境への適応について物語るとともに、温暖化が進む地球の未来へも思いをはせる。

 

▶▶▶『毎日新聞』(2011.11月27日付)読書面に書評が掲載されました(評者:海部宣男氏)。

▶▶『毎日新聞』(2011.12月11日付)読書面『2011年この3冊』に掲載されました(選者:海部宣男氏)。

氷河時代をキーワードにした地球誌

池内了氏(総合研究大学院大学教授・科学史、宇宙物理学)


 地球の長い歴史において、大陸がゆっくり移動しながら、極寒の大陸や高山地帯が氷床に覆われる氷河期が周期的に訪れ、その間には比較的温暖な間氷期が挟まれていた。そのような激変する気候に応じて海面が大きく上下し、海流や気流も方向と強弱を変える中で、そこに生きる動植物の生態システムは豊かさを増していった。軌を一にするように、二本足で立った人類の祖先は原人からホモサピエンスへと進化した。

 本書は、過去百万年の気候変動の歴史をたどりつつ、生態系や人類がいかに変遷してきたかを総まとめしたもので、数多くの先人の研究成果を下敷きにし、豊富な図版や写真を使っての解説は説得力に富み、さしずめ氷河時代をキーワードにした地球誌と言うことができる。

 

氷河時代へのいざない

 

第1章    氷河時代の発見

論争と観察/熱心な運動/人類と氷床

第2章    手がかりを探す

海面とレス/なぜ氷河時代なのか?/ミランコビッチ曲線/年代測定法の革命/海底を掘削する/地磁気の逆転と氷河時代の境界/気候のサイクル

第3章    氷河時代はどのように始まったか

なぜ地球は寒くなったのか?/氷河時代はどうやって始まった?/地中海が干上がった/海洋大循環/パナマの矛盾/なぜ250万年前なのか/熱帯の氷河時代

第4章    気候のジェットコースター

氷河時代を探る/氷河時代を“解剖”する/氷が刻んだ大地/アマゾンの草原はなぜ消えた?/氷河の進出と後退/時計じかけの気候/氷河時代はどうやって始まる?/氷河時代の気候のジェットコースター

【コラム】軌道の離心率/地軸の傾き/歳差運動/ハインリッヒ・イベントはどうやって起きる?

第5章    人類の物語

氷河時代が始まるまで/アフリカを出る/ハイデルベルクの驚異/ネアンデルタール人/現生人類の登場/後期旧石器時代、進歩は続く/氷河時代末期の人類

【コラム】人類の食生活の変遷/火と人類の適応 その考古学的証拠

第6章    氷河時代の動物たち

動物の分布/アフリカの内と外/ヨーロッパ 毛むくじゃらの動物たち/北アメリカ大陸/オーストラリア 壮大な進化の実験/氷河時代の動物の最期

【コラム】巨大なネズミと小さなゾウ/氷に閉じこめられた絶滅動物

第7章    氷河時代のあと

最後の寒冷期/ユーラシア大陸/西南アジア/世界初の農家/アメリカ大陸/文明の始まり

第8章    地球の未来

地球温暖化の認識が遅れた理由/次の氷期はいつ起きる?/過去から学ぶ/小氷期/温室効果/過去の気候とCO2の役割/人類が引き起こした気候変動/未来をどう予測するか/未来の気候変動とその影響/許容できる気候変動の範囲/世界を救うコストは?/解決策

【コラム】IPCCとは?


参考文献

索引

【編著者】

ブライアン・M・フェイガン(Brian M.Fagan)

米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校名誉教授。人類学者として考古学や過去の気候変動に関する著書を中心に、40以上の書籍の執筆や編集をしてきた。

主な著書に『古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史』、『歴史を変えた気候大変動』、『千年前の人類を襲った大温暖化』、編書に『古代世界70の不思議―過去の文明の謎を解く』など邦訳多数。

 

【執筆者】

マーク・マスリン(Mark Maslin)

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの地理学教授、同大学環境研究所の所長。優れた古気候学者であり、過去の世界および地域的な気候変動の専門家であるとともに、気候変動関連の政策、過去および未来の地球の気候変動の原因、海洋循環、アマゾン川流域、東アフリカについても詳しい。『異常気象―地球温暖化と暴風雨のメカニズム』など7つの著書があるほか、90本以上の学術論文を発表してきた。環境研究所が発表した最初の報告書は、2007年にイギリスのテレビ局チャンネル4の番組「Dispatches」の「Greenwash」のもとになった。

 

ジョン・F・ホッフェカー(John Hoffecker)

米国コロラド大学の極地・高山研究所のフェロー。寒冷な環境への人類の適応の進化に詳しく、研究と著作の大半はロシアとアラスカの氷河時代の考古学に関するもの。2005年には、ロシア科学アカデミーから名誉学位を授与された。『Desolate Landscapes; A Prehistory of the North』、『Human Ecology of Beringia』(Scott A. Eliasと共著)など著書多数。

 

ハンナ・オリーガン(Hannah O’Regan)

 イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学の上級研究員。考古学者、古生物学者であり、氷河時代の肉食動物と洞窟の考古学に高い関心を寄せる。第四紀の哺乳類(初期人類や他の霊長類を含む)の分布、アフリカ南部の絶滅肉食動物、動物園の歴史と考古学、イギリス北部の洞窟の考古学に関する科学論文を発表。イギリスや南アフリカで、250万年前から20世紀初期までの数多くの遺跡で発掘調査に携わってきた。

 

【訳者】

藤原多伽夫(ふじわら・たかお)

1971年、三重県生まれ。静岡大学理学部地球科学科卒業。訳書に、マーリーン・ズック『考える寄生体』、クリス・マクナブ『「冒険力」ハンドブック』、ジョン・F・M・クラーク『ヴィクトリア朝の昆虫学』など。