コラム「アメリカ史の窓」

第7回 植民地時代のアメリカの平均余命

 長寿国として知られている現代の日本だが、昔のアメリカ人はどのくらい長く生きていたのか。まず当時の平均寿命は、現代とまったく感覚が違う。乳幼児の死亡率が非常に高かったので平均寿命が著しく下がる。そこで無事に成人した者がどの程度、長生きするかを見なければならない。例えばニュー・ハンプシャーのドーヴァーという街の住民は、25歳から約38年間生存している。したがって、成人まで存命した者は、だいたい60歳過ぎまで生きるのが普通であったと言える。
 ちなみにこれは当時のヨーロッパ諸国と比べるとかなり長い。だいたい同じ基準で考えると、イギリス人は50歳前後、オランダ人は50代後半、フランス人は60歳前後である。どうやらアメリカ人は長生きだったようだ。
 ジャック・ブリッソーというフランス人の旅行者は次のように記している。

「私は注意深く30歳から40歳の間の女性達を観察した。彼女達は概ね外見が良く、健康的であり、魅力的でさえあった。私は50歳の女性達も見たが、その溌溂した雰囲気はもしヨーロッパ人であれば40歳以上には見えないだろう。60歳と70歳の女性達も見たが健康で活き活きしている。[中略]。ここでは老人の数がヨーロッパはよりもはるかに多く、彼らは概ね身体能力と知的能力を維持している。マサチューセッツのイプスウィッチの牧師は90歳だがとてもうまく説教を行い、同じ年齢の他の者も日曜日に20マイル[約32キロメートル]を歩いて教会に通う」