コラム「アメリカ史の窓」

第15回 インディアンが衰退した二大要因

 北アメリカに白人が入植して以降、インディアンが徐々に西へ西へ追いやられたことは有名な話である。ただインディアンの人口と戦力からすれば、協力すれば白人を排除することは容易だっただろう。なぜインディアンは追いやられることになったのか。
 1749年にフロンティアを踏査したスウェーデンの探検家のペール・カルムによれば、インディアンは部族間の抗争や天然痘で多くが死んでいたという。天然痘は北アメリカでは知られていなかった病気であり、免疫がなかったインディアンはほとんど助からなかった。
 天然痘に加えてインディアンが衰退する要因になったのは蒸留酒である。同じくカルムによれば、「ブランデーは最も多くのインディアン殺している」という。蒸留酒も白人が北アメリカに渡ってくるまでインディアンが知らなかったものだ。蒸留酒を飲み過ぎて死ぬことは名誉ある死だと考えられていたらしい。もちろん白人もかなりの酒量であったが、インディアンは白人よりも蒸留酒に弱くその影響は深甚であった。
 ある18世紀末のイギリスの地理学者も次のように記録している。

「あらゆる機会にインディアンはまるで紳士のように振る舞い、そのような振る舞いに反するようなことは滅多にない。[中略]。蒸留酒で酩酊してしまうと、我々の前にまったく違った光景が繰り広げられる。インディアンは人間というよりも悪魔の化身のように見える。彼らは喚き、争い、互いに切り刻み合い、そして、あらゆる種類の暴虐を働く。[中略]。一度でもお酒の味を覚えてしまうとあらゆる手段で入手しようとする。そうなってしまうとインディアンは、あらゆる意味でさもしく卑しく嘘つきで下劣な存在になってしまう。蒸留酒を知ってしまったことで不幸になったこうした人々を救う手段はない」

 天然痘と蒸留酒という二つの要因によってインディアンの人口は急激に減少したという。もしその二つがなければインディアンは違った歴史をたどったかもしれない。